性格(キャラクター)

三つ子の魂百まで

 狭い意味で「性格」をキャラクターと言いますが、これは「刻み込まれた」というギリシャ語を語源としています。子供のこころ(脳)に刻み込まれたものです。環境や体験によって刻み込まれるもので概ね3歳くらいまでに決定されるものです。昔から「三つ子の魂百まで」と言われる部分です.家庭の環境、とりわけ母親との関係が、この性格形成に大きな影響を及ぼすのです。何となれば、人間の脳は、大体、3歳までに、60~80%出来上がるということが脳科学的にわかってきて、この3歳までの母親との触れ合い、愛着の度合いが、脳の発達に大いに関係し、その後のその子の人生に大きな影響を与えることが証明されているからです。

基本的構え

 先に述べたように、われわれが大体三歳ぐらいにかけて、両親との触れ合いが主体になって培われた、人間と人生に対する態度、つまり自己、他人、世界に対する反応態度を「基本的構え」(ビリーフ:信念)と言います。

 

 生まれたばかりの人間の子供の成長には、動物とちがって、母親の愛情、母と子の触れ合いが絶対に欠かせません。まだ言葉が喋れないときには、自分の欲求を泣き声で訴えます。親がそばにいなくて不安だ、お腹がすいた、オムツが濡れて気持ちが悪い、痛い、暑い、寒いといったような時に泣いて、しかも泣き声を変えてメッセージを発します。

 

 このような子供からのメッセージをきちんと受け止めて、母親が適切に対応してやると、子どもの心の中に「私は愛されている、私は大事にされている、大切な存在に違いない」という自分への信頼が生じ、さらに、母親という人類の代表を通して、自分の価値だけでなく、他人や世界の存在の意味を感じ取るようになっていきます。このような自他に対する信頼に基礎になる体験を通して、私は生きることを保証されている、という安心感と、私は生きていくことができる、という自分の能力に対する自信を身に着けていきます。これを「基本的信頼感」(自他肯定の構え)と言います。

 

 これとは逆に、子どもからのメッセージに対し、忙しいからといってほっておかれたり、無視されたり、うるさいといって叩かれたり、つねられたりして、親が期待通りの対応をしてくれないと、子どもの心に「私は愛されていないから安心できない、私は大事な存在でないのだ、私は邪魔者なんだ、ダメな人間なんだ、いない方がいいんだ」という構えを刻み込むことになり、その子の人格そのものを否定してしまうことになります。その結果その子の人格の発展が阻まれ、成人してからも自分の性格のアンバランスに苦しむことになるのです。このように、先の「基本的信頼感(自他肯定の構え)」とは反対のアンバランスは、基本的構えの歪みとなって現れ、生きていくことへの不安感と自分の能力に対しての自信のなさ(自己否定感)を身に着けていくことになります。これらのアンバランスは、親子の触れ合いの内容や程度によって、三つに分けられます。

 

 ①  自己否定・他者肯定

  【自分はダメで、人はよい:自己軽視、対人恐怖、劣等感、うつ反応、交流の回避】

 ②  自己肯定・他者否定

  【自分はよいが、人はダメ:強い自己愛、野心家、支配的、排他主義】

 ③  自他否定

  【自分も人もみなダメ:虚無主義、放棄・絶望、精神病、自殺 基本的不信感】

 

 これらの基本的構え、三つ子の魂が後々の人生に大きな影響を及ぼすのです。人生のさまざまな場面、たとえば、職業の選択、結婚、育児、仕事上、生活上の決断等々での行動を左右する大きな力を持っています。

 

 このように、われわれの基本的な構えは、それぞれが持つ、生まれながらの気質・素質を基盤として、人類の代表として、最初にかかわる母親との触れ合いに始まって、幼児期における両親のあり方と、それに対する子どもの受け取り方などによって形成されていきます。この過程が、本人の素質、両親の非建設的な影響などによってスムーズに運ばないと、基本的信頼感の欠如や自律性の不全といった基本的構えの歪みが起こります。その後、子どもが10歳ごろまでに、対人関係を含めた特定の人生体験を経る間に、何らかの新たな学習体験によって修正が行われないと、これらのゆがんだ基本的な構えは、本人の行動様式の一貫したシステムとなって、固定化していきます。これが、前述した能力の発揮を妨げる要因となり、潜在能力の顕在能力化を阻むことになるのです。

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