役割行動~タテマエの行動

パーソナリティの最表層部分

 役割行動は、パーソナリティの一番外側を覆っている部分で、周囲から最も観察しやすい態度です。象徴的なのは名刺に印刷された肩書で、社会的地位や職業的役割に合わせた行動スタイルのことです。この役割行動は、具体的には、「社長なら、社長らしく」「先生なら、先生らしく」「警察官(公務員)なら、警察官(公務員)らしく」といった、周囲から期待、要請、強制される、公的な態度表現のことです。個人は誰でも組織に属すると、この役割行動をスムーズに取るように要請され、次第に身につくようになるものです。この役割への適応の速さと慣れは、知能のレベルや性格によって個人差が生まれます。

 

 日常、職場での態度や行動は、役割行動によって規制を受け、パーソナリティの内部に隠された気質や性格などは表に現れません。いわゆるタテマエの行動様式であり、表面的な人間関係といえます。つまり、役割行動は、知恵と経験がより強く反映されるパーソナリティで、これにより、感情的な部分などは、抑圧されるのが大きな特徴です。

ホンネを仮面で隠した行動~ストレスとの関係も深い

 役割行動は、周囲から期待され、要請、強制されるものだけに、必要のないときには、簡単に取り外すことができます。たとえば職場から離れた、お酒の場でお酒が入ったときには、期待、要請、強制がなくなって、開放的になり、パーソナリティの表皮がはがされ、普段抑圧されている感情やホンネが吐き出されるからです。しかしそれが度を過ぎると「社長らしくない」、「先生らしくない」、「公務員らしくない」と役割を失う結果にもなりかねません。逆に言えば、役割行動は単に社会や職場内だけでなく、私的な交際にも大きな影響力を持ち、逸脱行為には目を光らしているのです。それだけに役割行動はストレスと深い関係があるのです。

人生は役割の連続

 人間は必ず役割を持っており、人生はその役割の連続です。人は他者とのつながり(関係性)の中で存在します。そこから役割が生まれてきます。役割とは、いのち、使命、ハタラキといえます。それぞれの役割は単独では存在せず、お互い助け合い、影響しあいながら存在しています。しかもそれぞれの置かれた立場や周囲の環境の変化に応じて、果たすべき役割も増えたり、変わったりします。たとえば、独身の男性が結婚することによって、それまでの親に対する子どもの役割のほかに、妻に対する夫の役割が増え、子どもができれば子どもの親としての役割が増え、求められる役割、ハタラキも変わってきます。また、会社の中で、管理職になれば、上司に対する役割のほかに、部下に対して上司としての役割が増え、与えられる役割、求められる役割が変わります。それらの変化に対応しながら、自らを、自らの働きを変えていかなければなりません。何となれば、環境の変化、役割の変化に気づかず、対応が遅れたり、しっかり果たせなかったために信頼が得られず、自らの存在価値を危うくすることもあるからです。

 人間は、本質的に他動的存在であり、他者がいて自分の存在が与えられ、他者によって自分の意味や価値が与えられるのです。自分の存在並びに意味、あるいは価値を獲得するためには、他者(社会、人々)にとって、意味ある、価値ある存在になるほかはないのです。すなわち、与えられた、または自らが獲得した役割(使命・ハタラキ)を、周囲の期待に応えるべくしっかり果たすことにほかなりません。

 

 自分だけの考えや物の見方で、自らの役割を測るのではなく、周囲とのつながりの中で、周囲の期待をきちんと把握して、自らの役割(使命)を認識・自覚し、行動することが必要です。それで初めて、役割をしっかり果たした、ということになります。(図‐5)

図5 役割期待、役割自覚、役割行動
図5 役割期待、役割自覚、役割行動

たとえば、人は一生の間に

 家庭にあっては、親子、兄弟、姉妹、夫婦、祖父母、孫、親族等

 職場にあっては、従業員、管理監督者、経営者等

 社会にあっては、友人、先輩後輩、同級生、同郷者、所属する集団のメンバー等

の役割を持ちます。この役割をしっかり果たすことが、実はその人の幸せ、生き甲斐にかかわっています。それぞれの役割をしっかり果たさなければ、相手や周りの関係者から信頼、信用を得ることができず、幸福になることは難しいからです。

図6 役割のつながり
図6 役割のつながり

 人間は小宇宙的存在であり、無限の空間(宇)と無限の時間(宙)の交差点に現在の自分が立っています。石川光男国際基督教大学教授は、そこから「時間的役割認識と空間的役割認識」が生まれてくると言われ、「時間的役割認識」とは、歴史的であり、過去と未来に対してどのような役割を果たすかという役割認識を意味し、自分が生きている時間だけに着目するのではなく、自分の死後に何を残すかという立場で、少なくとも百年を単位とした時間的スケールの拡大が要求され、「空間的役割認識」とは、自然・社会・文化という三つの環境のために個人や組織(企業)がどのような役割を果たすかという役割認識を意味し、友人や家族といった小さなスケールから地球規模の自然や人類を考えるという大きなスケールにまで視野を拡大する必要がある、としています。(石川光男著「自然に学ぶ共創思考」)そこから、万物相互依存(one in all , all in one)の認識と万物相互奉仕(one for all , all for one)の実践の必要性が出てくるのです。(図‐6)

この自分の役割(使命、ハタラキ)をしっかり果たす、その行動基準を英語では「~シップ(~ship)」と言い、日本語では「~道」と言います。ジェントルマンシップ、スポーツマンシップ、リーダーシップというは、社会人として、スポーツマンとして、リーダーとして、それぞれの役割をしっかり果たすための行動基準であり、道です。武士道、華道、茶道等みな同じです。

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